心肺同時移植レシピエントの適応基準

1.心肺同時移植の適応となる疾患
心肺同時移植の適応となる疾患は,移植以外では救命ないし延命の期待が持てない以下の重症疾患とする.
 1)心機能低下を伴う原発性肺高血圧症を含む肺移植適応肺疾患
 2)肺高血圧を伴う先天性心疾患(Eisenmenger症候群)で外科的修復が困難か,心機能低下を伴うもの
 3)肺低形成を伴う先天性心疾患で外科的修復が困難か,心機能低下を伴うもの
 4)その他,心肺同時移植適応検討小委員会が認めたもの

2.適応条件
上記の疾患で心不全もしくは呼吸不全により,心肺同時移植でなければ救命ないし延命の期待が持てない以下の場合を適応とする.
 1)進行した肺疾患により,肺移植の適応が考えられる症例において,外科的修復の難しい先天性心疾患や高度心機能低下を伴い,最大限の内科的治療によってもNYHAIII度からIV度に相当する臨床症状から脱しない場合.
 2)高度心不全を呈し心移植の適応が考えられる症例において,薬剤抵抗性の不可逆的肺高血圧[一酸化窒素の吸入又はプロスタサイクリンの静脈内投与でTranspulmonarygradient(TPG)が15mmHg以上,または肺血管抵抗が8woodunit以上の症例]を伴う場合.
 3)年齢は55歳以下が望ましい.
 4)本人および家族の心肺同時移植に対する十分な理解と協力が得られている.

3.除外条件
 1)絶対的除外条件
  a)肝臓,腎臓の不可逆的機能障害
  b)活動性,全身性感染症
  c)薬物依存症(アルコール及びニコチン依存症を含む)
  d)悪性腫瘍   e)HIV抗体陽性
 2)相対的除外条件
  a)肝臓,腎臓の可逆的機能障害
  b)活動性消化性潰瘍
  c)合併症を伴ったインスリン依存性糖尿病
  d)高度胸郭変形や胸膜に広範な癒着や癩痕
  e)高度筋神経疾患
  f)極端な低栄養又は肥満
  g)リハビリテーションが行えない,又はその能力が期待できない症例
  h)本人及び家族の理解と協力が得られない
  i)精神社会生活上に重要な障害

4.適合条件
 1)ABO式血液型ABO式血液型の一致(identical)だけでなく,適合(compatible)の待機者も候補者として考慮する.
 2)体格心移植での体重差(下記(1)),及び両肺移植における予測肺活量による基準(下記(2))を参考にするが,判断は主治医(移植医)に委ねる.
  (1)心移植の選択基準体重差一20%~30%以内が望ましい.
  (2)両肺移植の選択基準予測VCD注1/予測VCR注2×100値(%)が80~100%であることが望ましい.
   注1)予測VCD:臓器提供者(ドナー)の予測肺活量
   注2)予測VCR:移植希望者(レシピエント)の予測肺活量予測肺活量の計算式
  1.    (男性)予測肺活量=(27.63-0.112×年齢)×身長(cm)
  2.    (女性)予測肺活量=(21.78-0.101×年齢)×身長(cm)
     3)前感作抗体リンパ球直接交差試験(ダイレクト・クロスマッチテスト)を実施し,陰性であることを確認する.パネルテストが陰性の場合,リンパ球直接交差試験(ダイレクト・クロスマッチテスト)を省略できる.
     4)CMV抗体CMV抗体陰性の移植希望者(レシピエント)に対しては,CMV抗体陰性の臓器提供者(ドナー)が望ましい
     5)HLA型当面,選択基準にしないが,必ず検査し,登録する.

    5.優先順位適合条件に合致する移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には,優先順位は,以下の順に勘案して決定する.
     1)虚血許容時間
    虚血許容時間を最優先する.臓器提供者(ドナー)の心臓を摘出してから4時間以内に血流再開することを第1条件とする
     2)心臓移植希望者(レシピエント)選択基準で選ばれた移植希望者(レシピエント)が心肺同時移植の待機者である場合であって,かつ,臓器提供者(ドナー)から心臓および両肺の提供があった場合には,当該待機者が肺移植待機リストで下位であっても,当該待機者に優先的に心臓および両肺を同時に配分する.
     3)肺移植希望者(レシピエント)選択基準で選ばれた移植希望者(レシピエント)が心肺同時移植の待機者である場合であって,かつ,臓器提供者(ドナー)から心臓および両肺の提供があった場合には,当該待機者が心臓移植待機リストで下位であっても,当該待機者に優先的に心臓および両肺を同時に配分する.
     4)心臓移植希望者(レシピエント)選択基準および肺移植希望者(レシピエント)選択基準で選択された待機者が別人であり共に心肺同時移植を希望している場合であって,かつ,臓器提供者から心臓および両肺の提供があった場合には,
  1.ABO式血液型が一致(identical)する者を適合(compatible)する者より優先し,  
2. 1の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合は,心臓移植希望者(レシピエント)選択基準における医学的緊急度の高い者を優先し,  3. 2の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には,心臓移植希望者(レシピエント)選択基準の医学的緊急度Statuslの待機期間が長い者を優先し,  4.3の条件が同一の移植希望者(レシピエント)が複数存在する場合には,登録日からの延べ日数の長い者を優先する.
 5)心臓または肺の移植希望者(レシピエント)において,第1順位として選択された移植希望者(レシピエント)が心肺同時移植の待機者であっても,臓器提供者(ドナー)から心臓および両肺の提供を受けられない場合は,心臓または肺の単独移植希望者(レシピエント)のうちで最も優先順位が高いものを選択する.

6.その他医学的な理由により心臓移植希望者(レシピエント)選択基準における医学的緊急度がStatus3になった場合,肺移植希望者(レシピエント)の待機リストを「待機inactive」とするが,その間の待機期間は加算される.
<附則>
1.関連学会における適応評価委員会において心肺同時移植の適応があると評価された心肺同時移植希望者(レシピエント)は,(社)日本臓器移植ネットワークの心臓移植待機リストおよび肺移植待機リストの両方に登録される.

2.新規に登録された心肺同時移植希望者(レシピエント)の待機期間は登録後の日数を計算することとする.既に心臓または肺の待機リストに登録されている患者が心肺同時移植に登録変更する場合には,変更以前から登録している待機リストにおける待機日数は変更以前の待機日数も含めて計算することとし,新規に登録した待機リストにおける待機日数は登録変更後の日数を計算することとする.