増刊号 (2015.1.5)
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JCS News 2015(平成27年) 新年のご挨拶
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会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。
昨年12月24日に第3次安倍内閣が発足いたしました。景気回復の政策が期待されています。ただ、我が国の高齢化率は25%を超え、それに伴い循環器疾患の増加が著しい状況にあります。要支援・要介護者は500万人を超えていますが、この中には心不全患者も多数おられます。また、日本人の死因の第1位はがん、第2位は心疾患です。年間約20万人の方が心疾患で亡くなられています。がんの中で死亡が一番多い肺がんでも約7万人、二番目に多い大腸がんでも約5万人ですので、心疾患による死亡の多さが御理解いただけると思います。我が国の国民医療費は年々増加し、現在、年間約30兆円の規模となっています。医療費全体に占める循環器疾患の割合は10%であり、がん全体の11%に匹敵し、さらに脳血管疾患を加えると16%となります。このような現状のもと日本循環器学会は日本の医療に対して大きな責任があると考えます。日本循環器学会は、現在、正会員数2万6千人を擁する日本有数の学会です。循環器内科、心臓血管外科、小児外科、循環器学の基礎研究者など多くの分野の専門家が属しています。
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日本の医療において重要な問題は、まずは現状の把握であります。我が国の循環器疾患診療の動向を把握することは、今後の診療体制のあり方を考える上で重要な課題です。日本循環器学会学術委員会では、2004年から循環器疾患診療実態調査を開始しました。2013年からはThe Japanese Registry Of All cardiac and vascular Diseases(JROAD)と名付け、全ての循環器専門医研修施設・研修関連施設(約1300施設)からデータを収集することで、本邦循環器疾患の実地診療に関する精度の高い実態把握が可能となりました。例えば、最新の2013年の調査結果では、急性心筋梗塞での入院患者数は約7万人、心不全での入院患者数は約23万人で、その入院中の死亡率は、それぞれ8.6%、8.3%でした。この成績は欧米や諸外国に比べ非常に良い成績を保っています。これは日本の循環器医の能力の高さ、救急医療に熱心に取り組んでいる事の現れであると思います。ただこのような事実は一般の方々には十分に知られていないので、これらの診療実態の報告とともに最新の医療の御紹介も兼ねまして、昨年より東京都千代田区の学会事務局で月一回プレスセミナーを開催させていただいております。
研究分野でも、わが国の循環器病学は質が高く、世界的にも高く評価されています。医学の発展は基礎研究の充実が欠かせません。基礎研究から臨床研究へのトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の重要性はかねてより指摘されています。日本循環器学会としても最新の基礎研究を行い、臨床研究、さらにトランスレーショナルリサーチを行なえる組織作りを考えています。
2015年4月24日(金)から26日(日)までの3日間、大阪国際会議場、グランフロント大阪を主会場として第79回日本循環器学会学術集会を開催させていただきます。本学術集会のメインテーマは「日本発—最新の循環器病学」といたしました。今後も世界へ発信できるレベルの高い研究は数多く生まれると実感しており、このテーマを選びました。本学会では市民公開講座も開催し一般の方々にも聴講いただき、循環器病に関する知識の共有を諮りたいと思っております。この公開講座の内容は新聞紙上でも発表いたしますので御覧いただければ幸いです。
2015年が皆様にとって良い年となりますことを祈念しております。
2015年1月1日
日本循環器学会 代表理事 小川 久雄 (熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学 教授 国立循環器病研究センター 副院長)
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