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増刊号 (2018.1.5)

 


JCS News 2018(平成30年) 新年のご挨拶

会員の皆様、新年あけましておめでとうございます。

昨年の厚労省の発表によりますと国民の平均寿命は男女とも世界第2位で男性が80.98年、女性が87.14年といずれも過去最高を更新しました。しかし健康寿命と平均寿命との間には依然として男性で9年、女性で12年の解離があり変わっていません。この解離の原因の多くの部分を脳卒中と循環器病がしめることから、一昨年健康寿命の延伸を目的として「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を作成しました。「5か年計画」では重要3疾患として脳卒中・心不全・血管病をあげ、5戦略として、診療体制整備・人材育成・予防啓発・疾患登録・研究活性化としましたが、昨年はそれらを実行に移しました。

 

日本循環器学会 代表理事


予防啓発の一環としてまず心不全の定義を決めました。心不全は医師なら誰でも知っていますが、いざ一般の方に説明しようとすると容易ではありません。教科書を見ると「心不全とは、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、運動耐容能が低下する臨床症候群」といったことが記載されています。これでは医師以外の方は理解できません。そこで循環器学会では以下のような定義を発表しました。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」。また心不全の重要性を広く知っていただくために忍者ハットリシンゾウ君をイメージキャラクターに決めました。私くらいの年代ですとテレビドラマで、若い方はテレビアニメで忍者ハットリ君を見た方も多いと思いますが、主人公ハットリカンゾウの弟がハットリシンゾウです。藤子不二雄Ⓐ氏のご厚意によりシンゾウ君に協力してもらい、シン・シン(心臓・身体)健康プロジェクトを推進しています。多くの疾患において予防が重要ですが心不全ほど有効な疾患はありません。心不全は多くの段階で予防が可能だからです。まずは減塩、肥満予防、禁煙、運動などの生活習慣の改善が重要であり、次に高血圧や高脂血症の治療、さらには心臓の異常から心不全にならないための1次予防、そして最後が心不全の急性増悪をさせないための2次予防です。心不全は一旦発症しますと治療に難渋し予後も不良ですのでその重要性を国民に理解してもらう啓発活動が大変重要です。

我が国には約100万人の心不全患者がいると推計されていますが正確な数字ではありません。正確な患者数を知るには全国レベルの疾患登録が必要です。昨年より私が代表を務めさせていただき、心不全、虚血性心疾患各1万人の登録研究を開始しました。より悉皆性の高い疾患登録を行うためには、癌のように「対策基本法」が必要です。今年も「脳卒中・循環器病対策基本法」の成立のために尽力したいと思います。

我が国の科学研究力の低下が叫ばれています。科学論文数が諸外国に比べて伸び悩んでいるといった報道がされていますが、循環器の基礎研究論文に関しては伸び悩むどころではなく10年前と比べると半減しています。そこで我が国の循環器基礎研究を活性化するために昨年循環器学会内に基礎研究部会を立ち上げました。本年1月6,7日品川において第1回の基礎研究フォーラムを開催します。このフォーラムを契機に我が国の基礎研究が活性化し、我が国から病態の解明や創薬が行われることを祈念しています。

本年も「対策基本法」の成立、「5か年計画」の実行を中心に、循環器の研究と診療の発展のために精一杯活動してまいります。会員の皆様の更なるご理解とご支援をいただければ幸いに存じます。

2018年が皆様にとりまして、素晴らしい年になりますことを心より祈念申し上げます。

一般社団法人 日本循環器学会
代表理事 小室一成
東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授


 

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