そこで循環器学会としては5か年計画検討部会を中心に、脳卒中協会、脳卒中学会と連携して、対策推進協議会において検討していただく際の参考資料を作成し厚労省に提出いたしました。またそれと並行して、「超党派 脳卒中・循環器病対策フォローアップ議員連盟(仮称)」が立ち上がることになり、昨年12月3日にその準備会が行われました。自民党の尾辻秀久参議院議員が代表となり、自見はなこ参議院議員が総事務局長、新谷正義衆議院議員が事務局長に就任することが決定しました。今後法律を実行していく上において議連が強力に後押ししてくださるものと期待しています。
本学会としても法律の実行に向けて着実に準備をしています。疾患登録に関しては、国立循環器病研究センターを中心として、まずは急性冠症候群、心不全、大動脈解離の登録がモデル事業として始まります。人材育成としては、本学会において「心不全療養指導士」制度の準備が着実に進んでおり2021年には認定の予定です。心不全診療には、急性期を病院で診療する専門医ばかりでなく、退院後の診療、管理が重要ですので、かかりつけ医、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、保健師など多職種の人材育成が必要です。療養指導士制度は他疾患においてもすでに始まっていますが、心不全にとってこそ最も重要な制度と考えています。
循環器疾患、とりわけあらゆる循環器疾患の終末像である心不全ほど、予防が重要かつ有用な疾患はありません。生活習慣の改善から始まり、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの心臓病リスクの予防、心筋梗塞や不整脈など心臓病の予防、急性心不全の予防、慢性心不全から急性増悪の予防まで、何回も予防のチャンスがあるのが心不全です。そこで本学会としては、心不全の啓発活動の一環として、忍者ハットリシンゾウ君を使ったシンシンキャンペーンや一般向け心不全啓発セミナー等を行いました。また本年2月には多くの著名人を招いて健康ハートシンポジウムを開催いたします。研究の活性化に関しては、基礎研究部会として、第3回基礎研究フォーラム(BCVR)を開催するとともに多くの研究者に助成を行いました。さらに将来の研究の活性化にも関係する国際化を目指して、本年3月には京都において第84回日本循環器学会学術集会時にAsian Pacific Society of Cardiology (APSC)が同時開催されますが、さらに来年の第85回日本循環器学会学術集会時にはWorld Congress Cardiology (WCC)の開催されることが決定されました。今後日本循環器学会学術集会への海外からの参加者や我が国への留学生が増加するばかりでなく、我が国との国際共同研究が増え、さらに我が国のすぐれた医療が世界に発信されることを期待しています。私は、昨年12月にインドとバングラディッシュの循環器学会に参加しましたが、彼らの循環器医療に対する熱意と日本への大きな期待を感じました。ACC Shanghai, ACC Japan, ESC Asiaなど欧米の学会が盛んにアジアの諸国にアプローチしてきており、一方で中国が最近ESCのようなアジアの学会としてAsian Heart Societyをつくると発表しました。このような国際情勢の中、国際渉外委員会を中心に我が国がイニシアチブをとり、多くのアジア諸国と一緒にレジストリー研究やガイドライン作成を開始しました。人種的に近く、リスクや疾患特性においても共通点の多いアジア諸国の人たちと協力して共に発展していきたいと考えています。
私は、昨年第83回日本循環器学会学術集会を主催させていただきました。昨年は、基本法も通ったことから循環器病の診療・研究が大きく変わるスタートの年になると思い、テーマを「循環器病学RENAISSANCE−未来医療への処方箋」としました。会員の皆様のご支援とご協力のおかげをもちまして、年度末のお忙しい時にも関わらず過去最高の18,825名もの方にご参加いただき盛会裏に終えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。
2020年が皆様にとりまして、素晴らしい年になりますことを心より祈念申し上げます。
一般社団法人 日本循環器学会 代表理事 小室一成 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
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