Cardiomyocyte-Derived Mitochondrial Superoxide Causes Myocardial Electrical Remodeling by Downregulating Potassium Channels and Related Molecules (Circ J No.8 1950-1959)

編集長のコメント:
 本研究は,心筋特異的Mn-SODヘテロ欠損マウスにグルタチオン欠乏状態を加えることでユニークな心筋特異的酸化ストレスモデルを作製し,心筋ミトコンドリア由来のスーパーオキサイドがKv4.2チャネルの発現低下などを介して電気的リモデリングを惹起していることを初めて示しました。
出典元:Medical Tribune(2014年8月28日号p15)

著者の横顔:
所属先:北里大学循環器内科
(現・日本大学板橋病院循環器内科)
氏名 :黒川 早矢香氏
 黒川氏は北里大学を2003年に卒業。心臓カテーテル治療に携わりたいと,同大学での臨床研修3年目に循環器内科(当時:和泉徹教授,現:阿古潤哉教授)に入局。2007年に同大学大学院に入学し不整脈研究班に所属,診療教授の庭野慎一氏の指導を受けた。当時,循環器分野でも不整脈や電気生理学はむしろ難解に感じていたので,大学院で勉強しなければ苦手意識を克服できないと考えたという。
 同氏らは,不整脈基盤の形成過程やそれを抑制するアップストリーム治療の研究を進めてきた。その一環として黒川氏も,酸化ストレスの不整脈への影響に関する研究を開始。BSO投与により全身性グルタチオン欠乏を惹起した酸化ストレスモデルでMAPD90の延長とERPの短縮,心室の催不整脈性の増強が認められたことから,酸化ストレスが電気的リモデリングを惹起しうることを報告した(Circ J 2011; 75: 1386-1393)。このモデルの問題点を踏まえて,心筋特異的酸化ストレスモデルで,しかも器質的心疾患を起こさない実験系の確立に試行錯誤を重ねたことが,実を結んだ。H/M-Sod2+/−+BSOという2段階で酸化ストレスを増強した今回のモデルでは,心臓の構造や機能にはほとんど影響を与えないものの,心筋ミトコンドリア由来のスーパーオキサイドが増強されることを確認。その上で,酸化ストレスでも不整脈が起こりうること,またその背景にK+チャネルの変化が影響している可能性について明らかにできたことは意義深いという。
 同氏は「不整脈基盤の形成過程における酸化ストレスの制御を研究することは,既出のアップストリーム治療の概念を超える次世代の治療につながる可能性がある。今後は臨床医としての技能向上とともに,不整脈を根本から治療する研究をしたい」と抱負を述べている。
出典元:Medical Tribune(2014年8月28日号p15)