Comparison of Percutaneous Coronary Intervention With Coronary Artery Bypass Grafting in Unprotected Left Main Coronary Artery Disease - 5-Year Outcome From CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2 - (Circ J 2015; 79: 1282-1289)

編集長のコメント:
東北大学循環器内科 教授
Circulation Journal 編集長 下川 宏明 氏

冠動脈病変などに基づいてPCIとCABGの適応決定がなされますが,日本人におけるエビデンスはまだ十分とはいえません。本研究は,保護されていない左冠動脈主幹部病変に対してはCABGがPCIに比べて優れていることを示した点で重要です。
出典元:Medical Tribune(2015年6月25日号P18)

著者の横顔:
所属先:京都大学循環器内科
氏名 :塩見 紘樹氏

塩見氏は,京都大学大学院循環器内科を2013年に卒業後,同大学特定病院助教になった。同科教授の木村剛氏から“臨床研究においては自ら汗を流して,臨床に即した詳細なデータを集め,十分な検討を行うことで,実地臨床において重要な知見が得られるよう努力するように”と指導されてきた。大学院時代に約半年間かけて,今回の登録研究の参加施設を回って冠動脈造影所見を閲覧し,SYNTAXスコアの評価を行った。「診療現場での詳細を確認し,科学的に妥当な方法で解析を行った上で,客観的で信頼性のあるデータを発信することが重要」と塩見氏。  SYNTAXランダム化比較試験(RCT)のサブ解析では,ULMCAD患者全体でPCIとCABGの術後5年の主要心脳血管イベント(MACCE)リスクに有意差がなかった(Circulation 2014; 129: 2388-2394)。一方,今回の解析結果では,ULMCAD患者に対する術後5年の死亡/MI/脳卒中リスクは,CABG群の治療成績が有意に良好であった。こうした結果の相違は,観察研究では選択バイアスを完全に排除できず,またRCTに比べて高齢で多枝病変を有する重症例が多く登録されることや,同研究での患者登録期間が2005〜07年と左主幹部病変に対するPCIの過渡期であったという時代背景による可能性がある。同氏は「このように結果に影響を与えるさまざまな試験背景を考慮した上で国内外の臨床試験結果を適切に解釈し,日常臨床に生かしてもらうことが重要」と話した。また,国内の実地臨床での治療成績を継続的に評価することが重要であり,同氏らは第2世代DES時代(2011〜13年)を登録期間としたCREDO-Kyotoレジストリーコホート3を予定している。同氏はまた,急性心筋梗塞の治療では病院到着−バルーン時間短縮の効果は限定的で,発症から病院到着までの時間短縮が予後改善に重要なことを報告(BMJ 2012; 344: bmj.e3257)。現在,プレホスピタルケアの充実,重症心原性ショック治療の研究に取り組んでいる。
出典元:Medical Tribune(2015年6月25日号P18)