冠動脈疾患をはじめとする心疾患と脳血管障害を合わせた循環器疾患による平成12年の年間死亡数は、それぞれ14万7千人、13万3千人と癌による年間死亡数29万5千人とほぼ同数の我が国の主要な死因であると共に、罹患しつつ生存している膨大な患者が存在する。これらの循環器疾患を予防し、死亡・罹患率を減少させ、QOLの向上をはかることは、我々循環器医療に携わるものに共通する願いである。そのためには発症の危険因子に対する対策が重要となる。


日本循環器学会としてはこれまで高血圧、塩分過剰摂取、肥満、高脂血症、糖尿病などの危険因子に対して重点的に取り組み、成果を上げてきた。一方、喫煙の相対危険度は冠動脈疾患では1.7〜3倍、脳卒中では1.7〜8倍、突然死1.4〜10倍と極めて高い。また、各種の循環器疾患患者にとって、喫煙を継続することは、疾患そのものを悪化させるだけでなく、酸素運搬能を低下させるため、日常生活動作能力を低下させる。喫煙は喫煙者本人のみならず、受動喫煙によって非喫煙者にも冠動脈疾患や脳卒中を発症させる。未成年者や若い女性の喫煙は、我が国においてはむしろ増加しており、将来の循環器疾患の罹患とその予後に、重大な結果を招き、特に、経口避妊薬の常用と喫煙は相乗的に、循環器疾患のリスクを高める。したがって未成年者や女性を含めて、すべての国民の禁煙ならびに受動喫煙防止を推進する活動が望まれる。さらに、一次予防の観点から、禁煙推進は高騰を続ける医療費対策としても、費用効果比の優れた方策である。


 このように循環器疾患の予防と治療にとって、喫煙対策は極めて重要であるにもかかわらず、我が国の循環器医療に携わる医師の喫煙率は男性14%、女性13%であり、米国の20年前の状況よりさらに悪い。また我が国で循環器学会認定施設のうち全面禁煙になっている施設は5%にすぎず、循環器科に禁煙外来のある施設も5%しかない。このことは我が国の循環器医療者のこれまでの喫煙に対する認識の甘さと喫煙対策の著しい立ち後れを示している。そこで、循環器医療の専門家集団として、日本循環器学会は禁煙、受動喫煙防止活動を自らの足元から積極的に推進し、さらにその重要性を社会に発信することをここに宣言する。そして以下の3つの基本方針と10の具体的到達目標の提言を行う。


2002年4月25日
日本循環器学会
 禁煙推進委員会


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