アルガトロバン水和物のヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
II型における使用の出来高算定について
各位 標記については当学会を含む関係学会から厚生労働省に要望を出していたところですが、この度中医協で承認(2008/9/24)および官報で告示(第4920号、平成20年9月25日)されましたので、会員の皆様にお伝えいたします。 (参考) ・中央社会保険医療協議会 総会(第134回)議事資料(URL) (「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について」) ・提出要望書 「アルガトロバン水和物製剤についての『ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型における血栓症の発症抑制』の保険上の措置に関する要望」 |
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平成20年8月29日 |
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厚生労働省保険局医療課 課長 佐藤 敏信 殿 |
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循環器関連健保協議会 会 長 和 泉 徹 社団法人日本循環器学会 理事長 小 川 聡 日本心臓病学会 理事長 永井 良三 (公印省略) |
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アルガトロバン水和物製剤についての「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)U型における血栓症の発症抑制」の保険上の措置に関する要望 |
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謹啓 時下益々ご清祥の段、お慶び申し上げます。 さて、「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)U型(以下、HITU型)」は致死性の血栓塞栓症を合併する恐れがある重篤な疾患ですが、国内では治療薬が存在しませんでした。このため、米国などにおいて、HITU型の治療薬として承認されているアルガトロバン水和物製剤(商品名:ノバスタンHI注10mg/2mL 田辺三菱製薬株式会社、スロンノンHI注10mg/2mL 第一三共株式会社)について、平成17年4月より本剤を治験薬として医師主導治験(推薦学会:日本循環器学会、日本脳卒中学会)が実施され、本年7月16日に効能追加の承認を得ることが出来ました。当学会としても医療現場のニーズに基づく、重篤な疾患の治療に貢献することができ、当該疾患に対する医療の向上に期待を寄せているところです。 しかしながら、効能追加が承認され、保険診療が開始されるにあたり、DPC診断群分類において下記問題の発生が懸念されています。このような保険上の問題でHITU型の発症患者様の治療機会を損なうことのないようご措置いただきたく、ここに要望いたします。 謹白 |
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記 |
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【発生が懸念される問題】 ・DPCでの診断群分類上、「HITU型」は「続発性血小板減少症」として分類されると思われます。 ・しかしながら、「HITU型」は基礎疾患である「心筋梗塞、うっ血性心不全、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞など」に罹患した患者群において、血栓塞栓症の治療もしくは予防を目的に血液凝固を抑制するため投与したヘパリンが誘因となり、投与後5〜14日後に発症します。つまり、基礎疾患で入院中に当該疾患を併発することになるため、診断群分類では「医療資源を最も投入した傷病」の原則により、基礎疾患による分類が行われることになります。 ・「HITU型」は冒頭にも述べた通り、本邦においては治療薬が存在しませんでした。 今回、医師主導治験により「HITU型」の治療として、アルガトロバン水和物製剤が効能追加となりましたが、この治療に要する主な薬剤の平均薬剤費31,993点(医師主導治験時の単純平均値、最大値:66,201点、最小値1,477点)は基礎疾患の診断群分類上、当然のことながらDPCに反映されていないため、医療機関への直接負担になることが予想されます。 平成19年6月22日付の厚生労働省資料では、“高額な薬剤を出来高算定とするルール”が規定されています。そこでは「新たに保険導入又は効能追加の承認がなされた医薬品、医療機器のうち、以下の要件に該当するものを使用した患者は包括評価の対象外とし、出来高算定とする。」とあり、その用件は「当該医薬品等の標準的な使用における薬剤費(併用する医薬品も含む)の見込み額、使用していない症例の薬剤費の平均+1SDを超えていること」と記載されています。したがって上記のように平均薬剤費が31,993点と予想されますと確実に基準を超えることになります。 ・また、「HITU型」は発症頻度の低い疾患であり、発症頻度は基礎疾患や投与されるヘパリンの種類などによって異なり、ヘパリン投与患者の0.1%〜5%と報告されています。さらに、基礎疾患も多岐にわたることから、DPC調査において当該疾患の基礎疾患での一定症例数を確保することも困難であると予想されます。 【要望内容】 以上を踏まえ、以下の二点のいずれかを要望いたします。 @「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)U型」の発症時での出来高算定とすること A当該疾患の重篤性を勘案したDPC診断群分類での取り扱いを設定すること 以上 |
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別紙 医師主導治験 症例一覧 |
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*:頭蓋内出血の副作用により、投与開始3日後に薬剤投与中止となった。