
心不全療養指導士とは
About
心不全療養指導士とは
代表理事挨拶

(神戸大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野)
平田 健一
心不全療養指導士制度設立の背景と
療養指導士への期待
我が国において心不全患者が現在約100万人いると推計されていますが、超高齢化の進行により少なくとも2035年までは増え続けると推定されており、「心不全パンデミック」と呼ばれています。心不全は通常呼吸困難で発症し、時には救急車で病院に搬送されることもありますが、ほとんどの急性心不全患者は適切な治療により改善し退院することができます。しかしこれは症状が改善しただけであり、心不全が治癒したわけではなくこれ以降は慢性心不全の状態となります。退院後は主にかかりつけ医によって診療が継続されますが、多くの患者は再び呼吸困難の悪化といった急性増悪を発症し再入院となります。慢性心不全患者は、このように入退院を繰り返すうちに、徐々に坂道を下るかのようにADLを低下させ最終的には死に至ることとなります。この急性増悪を防ぎ、坂道を下る速度を少しでも遅くするためには、怠薬、過労、感冒罹患、暴飲暴食などをしないといった日常生活の管理と適切な運動や栄養指導が重要であり、そのためには医師だけでなく、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、薬剤師、臨床工学技士、公認心理師、⻭科衛生士、社会福祉士など多くの職種の人が必要となります。心不全こそ、様々な職種の人が各自の知識と技術、経験を生かしながらも、患者の情報を共有し連携して個々の患者を総合的に診ることが求められます。そこで日本循環器学会では、この目標を達成するために、新たに「心不全療養指導士」制度を設けることに致しました。「心不全パンデミック」を克服するために、少しでも多くの人に「心不全療養指導士」になっていただくことを希望致します。また「心不全療養指導士」を目指す人には、単に心不全に関する知識を修得するだけでなく、より良い心不全診療を実践するためのチーム医療の在り方も学んでいただきたいと思います。
資格設立の目的
日本循環器学会では日本脳卒中学会とともに、国家的見地から健康寿命社会を実現するための改善策を訴える目的で2016年12月に「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を策定しました。この計画は、脳卒中と循環器疾患を克服するためのあらゆる面からの問題点を抽出し、現時点の科学や技術で改善し得る課題および将来の新たな技術や考え方の方向性を示したものです。その計画のなかで心不全は重要3疾病のひとつと位置付けられ、人材育成、医療体制の充実、登録事業の促進、予防・国⺠への啓発、臨床・基礎研究の強化の5戦略が提案されています。この度、人材育成への取り組みの一つとして、日本循環器学会が主体となり「心不全療養指導士」資格を創設することになりました。