心不全療養指導士とは

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心不全療養指導士とは

日本循環器学会では2021年度より「心不全療養指導士」認定制度を開始します。この制度は、超高齢社会を迎えて心不全患者が急増している現状を踏まえ、心不全の発症・重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職に必要な基本的知識および技能など資質の向上を図ることを目的として創設されました。病院に限らず在宅をはじめとした地域など様々な場面で幅広く活動し、心不全におけるチーム医療を展開していくことで、心不全による増悪・再入院予防、そして生活の質(QOL)の改善を図ることを目指して、多くの専門職が取得できる資格となっています。

代表理事挨拶

日本循環器学会代表理事
(神戸大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野)
平田 健一

心不全療養指導士制度設立の背景と
療養指導士への期待

我が国において心不全患者が現在約100万人いると推計されていますが、超高齢化の進行により少なくとも2035年までは増え続けると推定されており、「心不全パンデミック」と呼ばれています。心不全は通常呼吸困難で発症し、時には救急車で病院に搬送されることもありますが、ほとんどの急性心不全患者は適切な治療により改善し退院することができます。しかしこれは症状が改善しただけであり、心不全が治癒したわけではなくこれ以降は慢性心不全の状態となります。退院後は主にかかりつけ医によって診療が継続されますが、多くの患者は再び呼吸困難の悪化といった急性増悪を発症し再入院となります。慢性心不全患者は、このように入退院を繰り返すうちに、徐々に坂道を下るかのようにADLを低下させ最終的には死に至ることとなります。この急性増悪を防ぎ、坂道を下る速度を少しでも遅くするためには、怠薬、過労、感冒罹患、暴飲暴食などをしないといった日常生活の管理と適切な運動や栄養指導が重要であり、そのためには医師だけでなく、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、薬剤師、臨床工学技士、公認心理師、⻭科衛生士、社会福祉士など多くの職種の人が必要となります。心不全こそ、様々な職種の人が各自の知識と技術、経験を生かしながらも、患者の情報を共有し連携して個々の患者を総合的に診ることが求められます。そこで日本循環器学会では、この目標を達成するために、新たに「心不全療養指導士」制度を設けることに致しました。「心不全パンデミック」を克服するために、少しでも多くの人に「心不全療養指導士」になっていただくことを希望致します。また「心不全療養指導士」を目指す人には、単に心不全に関する知識を修得するだけでなく、より良い心不全診療を実践するためのチーム医療の在り方も学んでいただきたいと思います。

資格設立の目的

心不全はあらゆる循環器病の終末像であり、増悪と緩解を繰り返しながら、運動耐容能の低下を来し、生命予後を悪化させる症候群です。心不全の増悪による再入院は医療負荷増大の原因となることに加え、患者や家族のQOLを低下させます。また運動耐容能の低下は生活機能の低下と直結し、患者や家族がその人らしく生活することを障害します。さらに治療抵抗性の心不全に移行すると、患者は苦痛を伴う症状や病状の進行に対する不安を抱えた生活を強いられます。このような特徴をもつ心不全は加齢性疾患であり、高齢化が急速に進行しているわが国において心不全が増加することは明確です。様々な問題を抱える心不全患者を包括的に支援し、患者や家族のQOLを維持し、かつ医療負荷の増大を抑えるためには、適切な治療の実施に加えて、医療専門職がチームを組み、それぞれの専門性を生かしつつ協働するチーム医療の実施が不可欠です。
日本循環器学会では日本脳卒中学会とともに、国家的見地から健康寿命社会を実現するための改善策を訴える目的で2016年12月に「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を策定しました。この計画は、脳卒中と循環器疾患を克服するためのあらゆる面からの問題点を抽出し、現時点の科学や技術で改善し得る課題および将来の新たな技術や考え方の方向性を示したものです。その計画のなかで心不全は重要3疾病のひとつと位置付けられ、人材育成、医療体制の充実、登録事業の促進、予防・国⺠への啓発、臨床・基礎研究の強化の5戦略が提案されています。この度、人材育成への取り組みの一つとして、日本循環器学会が主体となり「心不全療養指導士」資格を創設することになりました。

心不全療養指導士への期待

心不全は増悪の多くが服薬・食事など非医学的誘因であること、また高齢心不全患者は合併症が関連して再入院を繰り返すことが特徴といえます。心不全療養指導士はそういった予防可能な心不全増悪に対して、患者本人及び家族など介護者に正確な知識と技術を身に着けていただき、発症・増悪予防のためのセルフケアと療養を継続してゆけるよう支援していく役割があります。その役割を実践するためには、患者を取り巻く多職種との連携、更には地域医療との連携も必要であり、心不全療養指導士はこのような患者中心のチーム医療のキープレイヤーとなることが期待されます。

求められる役割

心不全療養指導士の主な役割は、医師以外の医療専門職が、各々の専門職が持つ専門知識と技術を活用しながら、心不全患者に対して最適な療養指導を行うことにあります。具体的な役割として、以下の5項目が挙げられます。
心不全の発症・進展の予防の重要性を理解し、その予防や啓発のための活動に参画することができる
心不全の概念や病態、検査、治療について理解し、それをもとに病状などを把握することができる
心不全の進展ステージに応じた予防・治療を理解し、基本的かつ包括的な療養指導を実施することができる
医療機関あるいは地域での心不全に対する診療において、医師や他の医療専門職と円滑に連携し、チーム医療の推進に貢献することができる
心不全患者に対する意思決定支援と緩和ケアに関する基本的知識を有している