・略史
・歴代理事長

略史

  1935年(昭和10年)4月、「日本循環器病学」誌が、京都大学教授真下俊一を主幹として創刊された。真下教授は巻頭言において、当時日本には研究業績を発表するのに専門学会がないばかりでなく、一般の臨床医に対する啓蒙的出版物もなかったため、循環器に対する新知識を伝えてその重要性と関心とを喚起しなければならないことを述べておられる。当時の「日本循環器病学」誌を手に取ると、論述と研究業績発表の他に、主幹自ら毎号執筆する講座、解説、臨床講義など解説的な内容が掲載されている。真下教授のユーモアを交えた編集後記が記載されており、読者に親しみを持っていただく工夫が凝らされている。

 1936年(昭和11年)3月30日、日本循環器病学会(The Nippon Association of Clinical Angio-Cardiology)が発足し、その第1回総会講演会が京都帝国大学医学部生理学講堂に於いて開催された。今日の日本循環器学会の嚆矢である。発起人は京都大学教授真下俊一、東京大学教授呉 建、九州大学教授金子廉次郎らであり、全国から300名余が参集した。

1940年、「日本循環器病学」誌の主幹として呉 建教授・金子廉次郎教授が、1942年には、東京大学教授佐々貫之、九州大学教授操 坦道、千葉医科大学教授堂野前維摩郷、熊本医科大学教授美甘義夫、満州医科大学教授原 亨、京都大学助教授前川孫二郎らが加わり、循環器病の学会としての基盤が確立した。会員数は年々増加し、第6回の総会講演会は初めて京都を離れ、九州大学において開催された。

1941年に第二次世界大戦が始まると、用紙の入手難などのため頁数は削減され、紙質も甚だしく粗悪なものとならざるを得なかった。1944年の第9回総会は紙上研究発表のみとなり、1945年、機関誌はやむなく休刊した。悲痛極まりないことに本学会の設立者であった真下教授が1945年9月、広島における医療調査中に殉職された。

戦後最初の学会は1946年11月、第10回総会講演会として京都大学に於いて開催された。この総会に集った会員は935人に及んだ。戦後の混乱と物資・食糧の不足にも関わらず、これだけの数の参加があったことは、本会の再発足が如何に望まれていたかを物語るものであろう。さらに本会が研究内容として臨床にとどまらず基礎方面の研究にも発展すべきものとして、日本循環器病学会の「病」の字を削除して「日本循環器学会」と改められた(英文ではClinicalを削除)。

1953年には、学会活動の国際化に対応するため、学会及び機関誌の英文表示が「The Japanese Circulation Society (Journal)」と変更された。会員数も学会発表論文数も年と共に増加し、1955年の第21回総会講演会では一般演題数を制限する必要に迫られた。そこで地方別の会員数に比例して演題数を割り当てることになり、これを契機に地方会が発足した。最初は東海、近畿、関東甲信越、九州、東北北海道、中国四国の6地区であったが、後に近畿から北陸が独立、東北・北海道および中国・四国が分離独立し、9地方会として今日に至っている。

 1958年、幹事会で規則改正委員会を設置し検討を重ねた結果、会則を改正し、会長、理事長、理事、評議員、監事及び幹事をおいて本学会を運営することに決定し、1960年第24回総会において承認成立、初代理事長は京都大学教授前川孫二郎が選出された。1981年4月、「日本循環器学会」が社団法人として認可された。それに伴い定款その他事務機構の整備も行われた。
1989年、「日本循環器学会認定循環器専門医制度」を開始した。内科認定医取得を前提としており、国際的にも通用する専門医制度の確立となった。1993年、専門医の教育研修のために「循環器専門医」誌が創刊された。

 国際学会との連携も年々活発化している。1954年の第2回世界心臓学会において、日本は理事国になった。1956年、アジア太平洋心臓学会が創設され、本学会もその理事国となった。1978年9月、東京に於いて第8回世界心臓学会が開催された。計17会場で特別講演12、シンポジウム45、一般演題1300の他、学術展示、教育セッション、サテライト・シンポジウムなど世界でも最大規模の学術討論会が7日間にわたり開催された。参加国86、海外からの参加者4,105人を含めて6,223人の参加数であった。1997年からは総会の参加者を海外からも募るようになり、2001年、第65回総会では、第二公用語として英語を採用した。抄録は全て英語となり、口頭発表の約4割が英語で行われた。

2012年4月、国の政策による公益法人改革への対応として、これまでの社団法人から「一般社団法人」へと移行した。これに伴い一部役職名称が変更となった(理事長→「代表理事」、評議員→「社員」、正会員代表→廃止)。

 以上のように、日本循環器学会は、日本における循環器病の研究・診療において先導的な役割を果たして来た。特筆すべき点として、ガイドライン作成や1999年の心臓移植再開に向けた移植対象者の判定など、社会的使命についても組織を挙げて取り組み、国内の医療レベル向上にも多大の貢献を果たしつつある。
日本循環器学会の歴史(1935年〜2021年)


日本循環器学会 歴代理事長・代表理事

第1代 1956-1969 前川 孫二郎(京都大学)
第2代 1970-1978 高安 正夫(京都大学)
第3代 1979-1981 木村 榮一(日本医科大学)
第4代 1982-1984 村尾 覚 (東京大学)
第5代 1985-1987 山田 和生(名古屋大学)
第6代 1988-1990 河合 忠一(京都大学)
第7代 1991-1993 河合 忠一(京都大学)
第8代 1994-1996 杉本 恒明(関東中央病院)
第9代 1997-1999 矢崎 義雄(東京大学)
第10代 2000-2001 篠山 重威(京都大学)
第11代 2002-2003 竹下 彰 (九州大学)
第12代 2004-2005 北畠 顕 (北海道大学)
第13代 2006-2007 山口 徹 (虎の門病院)
第14代 2008-2009 小川 聡 (慶應義塾大学)
第15代 2010-2011 松ア 益コ (山口大学)
第16代 2012-2013 永井 良三(自治医科大学)
第17代 2014-2015 小川 久雄(熊本大学/国立循環器病研究センター)
第18代 2016-2017 小室 一成(東京大学)
第19代 2018-2019 小室 一成(東京大学)
第20代 2020-   平田 健一(神戸大学)


*以上は法人化(1956年)以降の理事長(1956-2011年)・代表理事(2012年以降)である。
*上記年号は年度を表す。
*所属は就任時のものである。