心臓移植レシピエントの適応
2013年2月1日
- 心臓移植の適応は以下の事項を考慮して決定する。
- 移植以外に患者の命を助ける有効な治療手段はないのか?
- 移植治療を行わない場合、どの位の余命があると思われるか?
- 移植手術後の定期的(ときに緊急時)検査とそれに基づく免疫抑制療法に心理的・身体的に十分耐え得るか?
- 患者本人が移植の必要性を認識し、これを積極的に希望すると共に家族の協力が期待できるか?
などである- 適応となる疾患
心臓移植の適応となる疾患は従来の治療法では救命ないし延命の期待がもてない以下の重症心疾患とする。
- 拡張型心筋症、および拡張相の肥大型心筋症
- 虚血性心筋疾患
- その他(日本循環器学会および日本小児循環器学会の心臓移植適応検討会で承認する心臓疾患)
- 適応条件
- 不治の末期的状態にあり、以下のいずれかの条件を満たす場合
- 長期間またはくり返し入院治療を必要とする心不全
- β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全
- 現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例
- 年齢は65歳未満が望ましい
- 本人および家族の心臓移植に対する十分な理解と協力が得られること
- 除外条件
- 絶対的除外条件
- 肝臓、腎臓の不可逆的機能障害
- 活動性感染症(サイトメガロウイルス感染症を含む)
- 肺高血圧症(肺血管抵抗が血管拡張薬を使用しても6 wood単位以上)
- 薬物依存症(アルコール性心筋疾患を含む)
- 悪性腫瘍
- HIV(Human Immunodeficiency Virus)抗体陽性
- 相対的除外条件
- 腎機能障害、肝機能障害
- 活動性消化性潰瘍
- インスリン依存性糖尿病
- 精神神経症(自分の病気、病態に対する不安を取り除く努力をしても、何ら改善がみられない場合に除外条件となることがある)
- 肺梗塞症の既往、肺血管閉塞病変
- 膠原病などの全身性疾患
- 適応の決定
当面は、各施設内検討会および日本循環器学会心臓移植委員会適応検討小委員会の2段階審査を経て公式に適応を決定する。心臓移植は適応決定後、本人および家族のインフォームドコンセントを経て、移植患者待機リストにのった者を対象とする。
医学的緊急性については、合併する臓器障害を十分に考慮する。
付記事項
- 上記適応症疾患および適応条件は、内科的および外科的治療の進歩によって改訂されるものとする。