Preoperative Chronic Kidney Disease as a Strong Predictor of Postoperative Infection and Mortality After Coronary Artery Bypass Grafting (Circ J No.9 2225 -2231)

編集長のコメント:
 冠動脈バイパス術後のリスクを術前に予測し,あらかじめ対処することは臨床的に重要です。本研究は多施設共同研究により,術前の慢性腎臓病(CKD)が術後の感染症や院内死亡と強く相関することを示した点で意義があります。
出典元:Medical Tribune(2014年9月25日号p31)

著者の横顔:
所属先:京都大学心臓血管外科
氏名 :南方 謙二氏
 南方氏は1994年に京都大学を卒業と同時に,同大学心臓血管外科に入局。大学病院などで研修後,2000年4月から米国に臨床留学(オレゴン州・Providence St. Vincent Medical Center,ミネソタ州・Mayo Clinic)し,その間にまとめた論文で博士号を取得した。2003年に帰国後,大阪の民間病院で心臓血管外科の新規立ち上げに従事し,2009年に京都大学病院に戻った。昨年から埋め込み型補助人工心臓の治療を開始し,心臓移植実施準備を進めている。
 今回,同大学心臓血管外科の坂田隆造教授,南方氏の臨床留学の先輩である東京慈恵会医科大学循環器外科の坂東興教授らとともに多施設共同研究を主導。解析の結果,欧米で予後規定因子とされる糖尿病や血糖管理よりも,わが国ではCKDが術後感染症や院内死亡に強く関連することが分かった。
 米国胸部外科学会(STS)のデータでは,CABG患者のCKDの頻度は,軽症が51%,中等症が24%,重症が3.5%(透析患者1.5%を含む)。これに対し,今回の検討では,軽症は47%とほぼ同等だが,中等症,重症がそれぞれ34%,11%と高リスク患者が多かった。また,米国ではCABGのOff-pump手術の比率は20〜25%とされるが,わが国ではOff-pump手術を第一選択としている施設が多い。今回の検討でも症例の60〜70%がOff-pumpで行われ,術後感染や院内死亡リスクの抑制に寄与していた。
 南方氏は「わが国の心臓血管外科の技術は米国に比べて引けを取らないが,臨床研究の症例数が圧倒的に少ない。臨床成績を向上させるために,多施設共同研究で良質のエビデンスを蓄積する必要がある。今後も臨床の疑問や問題点の解決につながるような臨床研究を続けていきたい」と述べた。
出典元:Medical Tribune(2014年9月25日号p31)