Regulatory/Effector T-Cell Ratio Is Reduced in Coronary Artery Disease
(Circ J No.12 2935-2941 )


編集長のコメント:
 動脈硬化の成因における免疫機序の関与が注目されてきています。本研究は,冠動脈疾患患者の末梢血において制御性T細胞や制御性/エフェクターT細胞比が低下していることを初めて示した,インパクトのある重要な臨床研究です。
出典元:Medical Tribune(2014年12月25日号 P34)

著者の横顔:
所属先:神戸大学循環器内科
氏名 : 江本 拓央氏
  江本氏は兵庫県立淡路病院(現・淡路医療センター)で臨床研修後,2012年に神戸大学循環器内科博士課程に入学。炎症免疫研究グループに所属し,同科教授の平田健一氏,山下智也氏,佐々木直人氏らの指導を受け,今回の論文をまとめた。同科では,炎症免疫反応の制御による動脈硬化の新規予防・治療法の開発を目指して研究を進めている。その一環として今回,Tregを正確に同定するための最新の手法を用いて,安定CAD患者末梢血でTregおよびTreg/Teff比が低下していることを初めて示した。研究の次の段階では,動脈硬化による免疫のアンバランス状態をいかに改善できるかが問題になる。  今回の結果から,Tregを誘導するアプローチが有用と考えられるが,今のところ,抗体などの薬物によるTreg誘導は副作用の観点から,ヒトへの応用は難しい状況である。江本氏らは現在,紫外線や腸内細菌を治療に利用できないか検討中で,皮膚科疾患患者において紫外線照射によるTreg誘導作用,血圧や血管内皮機能への影響や,CAD患者における腸内細菌叢の変化について調べている。  同氏は「動脈硬化性疾患では適切な薬物療法を行っても心筋梗塞や脳梗塞,末梢動脈疾患の併発,再発を防ぎ切れない場合がある。このような患者では炎症免疫をターゲットにした治療が必要になるのではないか。その方法論をさまざまな角度から模索し,新しい治療法の開発につながるような研究をしていきたい」と抱負を述べている。
出典元:Medical Tribune(2014年12月25日号 P34)