Improved Survival With Favorable Neurological Outcome in Elderly Individuals With Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Japan -A Nationwide Observational Cohort Study-

編集長のコメント:
東北大学循環器内科 教授
Circulation Journal 編集長 下川 宏明 氏

 後期高齢者(75歳以上)の院外心停止例の救急医療の実態や心肺蘇生の有用性に関するデータは不足しています。本研究は,わが国のウツタインデータを用いて,その予後が改善してきていることや心肺蘇生の有用性を明らかにした点で意義があります。
出典元:Medical Tribune(2016年5月26日号)

著者の横顔:
所属先:金沢大学病院救急部
氏名 :舟田 晃氏

 舟田氏は金沢大学医学部を卒業後,同大学循環器内科に入局。2009年に同大学病院集中治療部特任助教に就任,2010〜14年11月の国立循環器病研究センター勤務を経て,2014年12月から現職。高齢者を中心にOHCAの実態や予後の改善について研究しており,今回,同大学救急部准教授の後藤由和氏,循環器内科教授の山岸正和氏の指導を受け,2008〜12年の全国前向きウツタイン登録から75歳以上のデータを解析した。

 2005〜09年のデータ解析では,80〜90歳以上のOHCA患者の転帰は改善しなかったが,今回の解析では,75〜94歳のOHCA患者の予後が経年的に改善していることが確認された。また,年齢,心停止目撃の有無,除細動の適応となる初期リズムは,強力な予後予測因子であることが示された。

 舟田氏は「95歳以上あるいは目撃なしの患者の転帰不良は,OHCA後最初に記録されたリズムが除細動の適応である頻度が著しく低いことに起因する。現行の救急医療体制では,一次救命措置において現場での蘇生の中止基準がなく,全例で処置や救急搬送が行われる。神経学的転帰良好の見込みがあるOHCA患者に,限られた医療資源を配分できる仕組みについて今後検討する必要がある」と考察。「バイスタンダーCPRは,さらなる改善の余地がある」と指摘。今後,市民講座などを通じて,高齢者の心停止に遭遇しやすい介護職員や同居家族,さらには地域住民を対象にしたCPRの教育に取り組みたいという。


出典元:Medical Tribune(2016年5月26日号)