日本循環器学会
第4回 日本循環器学会プレスセミナー
「小児における心臓移植の適応基準と施設認定基準」

2010年7月の改正臓器移植法の施行により、従来は年齢制限でドナーとならなかった15歳未満の小児からの臓器提供が可能となった。この法改正とともに、小児ドナーからの心臓移植実施施設も認定され、わが国も小児への心臓移植の第一歩を踏み出した。

中西氏は、小児での心臓移植の適応基準と、小児ドナーからの心臓移植実施施設の認定に当たっての施設基準を概説した。

適応基準-小児心臓移植の適応判定ガイダンス

小児の心臓移植適応患者の特徴として、成人より病期の進行が早いこと、小児特有の疾患(先天性心疾患等)があることなどが挙げられる(図1)。また、小児では成人で必須とされている検査(心筋生検、運動耐容能検査など)が実施しにくいことや、成人では効果が証明されているβ遮断薬・ACE阻害薬の効果についても未だ議論が分かれている。このため、成人とは違った観点から心臓移植の適応を判定する必要があり、日本小児循環器学会臓器移植委員会は小児(10歳未満)の適応基準として、「小児心臓移植の適応判定ガイダンス」を発表している。

小児心臓移植では対象となる疾患が多岐にわたり、さらに心臓移植の適応条件は疾患ごとに差異があることから、このガイダンスでは具体的な疾患名を挙げ、疾患ごとに適応条件を示している。対象疾患としては、拡張型心筋症・拡張相の肥大型心筋症、拘束型心筋症、左室低形成症候群、単心室型先天性心疾患、その他の先天性心疾患、心臓腫瘍、川崎病が挙げられている。また、心不全重症度判定においては、新生児、乳幼児では成人で用いられるNYHA機能分類を当てはめることが困難なため、哺乳力低下、体重増加不良、発育障害、易感染性、多呼吸・努力性呼吸などの症状を考慮した適応の判断が重要であるとしている。

施設基準

2010年7月、改正臓器移植法の施行に合わせ、小児ドナーからの心臓移植実施施設として東京大学、大阪大学、国立循環器病研究センターの3施設がわが国で初めて認定された(図2)。小児ドナーからの移植施設認定に当たって必要とされた「心臓移植チームの水準」の要点は、 まず、外科医には、成人・小児(10歳未満)どちらの場合でも、

が必要とされ、さらに小児では前述の要件に加えて、 が求められた。

また、循環器小児科医には、

が求められた。

以上のように、小児ドナーからの移植実施施設には、小児専門の外科医、循環器小児科医を擁することが、必要な水準とされた。

今後の施設拡大へ向けての課題

今回の改正臓器移植法では、虐待を受けて亡くなった児童からの臓器提供の禁止が明記されており、そのため臓器の摘出手術を行う臓器提供施設には、虐待防止委員会等の虐待の有無を判断する体制の整備が要件となっている。今後の小児の心臓移植普及のためには、こういった要件をクリアした臓器提供施設を拡大していかなくてはならない。

しかし、日本脳神経外科学会の2010年の調査では、既に臓器提供施設として指定されている施設でも、15歳未満の小児に対する脳死判定や臓器提供の体制が「整備されていない」と回答した施設が76%(222施設)に上り、「整備されている」と回答した施設は16%(45施設)にとどまった。この現状について中西氏は「改正臓器移植法が施行されたにもかかわらず小児の臓器提供の体制がまだ整っていない。体制の整備が急務である」と訴え、講演を結んだ。

図図1 小児の心臓移植適応患者の特徴
図図2 わが国の心臓移植実施施設

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